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イギリスで食品ビジネスを始める方法

  • kojikollective
  • 7月15日
  • 読了時間: 15分

Last updated: 15/07/2026


イギリスで食品に関するビジネスを始めたいと思っている方へ。

あるいは、まだお金は発生していないけれど「自分で作ったものを誰かに届けたい」「料理教室をやってみたい」となんとなく考えている方へ。

備忘録も兼ねて、私が2025年9月〜2026年5月にかけて実際に行った手続きをまとめます。


制度は変更されることもありますし、住んでいる場所やビジネスの形によって必要なことは変わります。この記事はあくまで「最初の取っ掛かり」として読んでいただき、最後はご自身で確認してください。

起業というのは正直麹づくりと同じくらいかそれ以上に万人に、それも気軽におすすめできるものではありませんが、やりたいことはあるけど難しそうだし…と悶々としている人に「やればできそう」と思ってもらえれば嬉しいです。



目次



・「何をするのか」を決める


手続きとは一見関係のない漠然とした問いに見えますが複数の手続きに関係大有りなので最初に決める必要があります。


どんな食品を作ってどう提供する?もしくは教室やレストランを開く?食品を仕入れて販売する?

自宅キッチンを使う?キッチンを借りる?

アルコールなど許可が必要なものは扱う?

このあたりで必要な手続きがかなり変わります。


ビジネス名も決めてください。

個人事業主の場合も必要です(もちろん自分の名前でも大丈夫です)。

登録商標などとかぶっていないか確認も忘れずに。


簡単なビジネスプランも、もし余裕があれば考えておくと後々便利です。

"Business plan template"で調べるとテンプレートが出てきます。

ビジネスプランがあると補助金やメンターによるサポートを利用する際「何をやりたいのか」を説明しやすくなります。

とはいえ、この時点で完璧である必要は全くありません。私もやらねば。。


私の場合は「自宅キッチンで麹と調味料を作り、オンラインもしくは直接販売する。申請が必要なものは今のところ取り扱わない。屋号はKoji Kollective」です。



・ビザ/住んでいる場所の要件を確認する


外国に住む私たちは自国にいる時と同じ自由が保証されているわけではありません。

特にビザ条件は絶対先に確認した方がいいです。

副業やself-employmentが禁止されているビザもありますし、条件付きで許可されている場合もあります。

好きなことを始めた結果、在留資格に影響が出るのは避けたいところです。


また、賃貸の場合は契約書に「住宅をビジネス用途に使ってはいけない」という条項が入っていることがあります。

実際には小規模なホームビジネスは黙認されているケースもあるようですが、後々のトラブル防止のために大家さんや管理会社にできれば書面で確認を取っておくと安心です。

持ち家の場合もモーゲージ契約や保険条件に影響する可能性がありますので担当者に確認をとることをおすすめします。



・Food Business Registration(カウンシル登録)


食品を扱う場合、法で定められた必須の手続きです。

ビジネスと名前に入っていますが、ビジネスでなくても「継続的に第三者へ食品を提供する」活動の多くが登録対象になります。


たとえばレストランや食品製造・販売はもちろん、無償のコミュニティ食堂や料理教室も条件によっては登録が必要です。

一方で、単発のチャリティイベントや既に登録済みのキッチンを借りるときは不要な場合もあります。

迷ったら地域のEnvironmental Health Officer(EHO)に相談するのが一番確実かもしれません。


登録方法は、"Register a Food Business"で検索して出てくる政府公式のウェブサイトの手順に従って質問に答えていくだけです。

登録期限は営業開始の最低28日前まで、登録は無料です。

登録手続きは政府公式のウェブサイトから行いますが、住んでいる地域のカウンシルに登録され必要があればカウンシルから連絡がきます。

特に何も言われなければ届け出た営業開始日から営業できます。



・HMRC登録


次は税金関連の手続きです。

イギリスでビジネスを始める時、個人事業主として始めるか有限会社を設立するかの主に2択になります。


Sole Trader(個人事業主)

Limited Company(有限会社)

設立の簡単さ

◎ 非常に簡単

△ 手続きが必要

会計・税務

◎ 比較的シンプル

△ 複雑

維持コスト

◎ 安い

△ 会計士費用などが増えやすい

個人資産の保護

△ なし

◎ あり

信用度

◎ 高い傾向

利益が少ない段階

◎ 有利なことが多い

△ メリットが少ない

利益が大きい段階

△ 税負担が重くなることも

◎ 有利になる場合あり

私は一人で小さく始めて固定費を抑えるためまずSole Traderを選びました。

後からLimited companyにすることもできますし、Limited companyからSole traderに戻ることもできます。


自分で確定申告(Self Assessment)をするにはUTR(Unique Taxpayer Reference)と呼ばれる番号が必要になります。これを取得するため、HMRCにSelf Assessmentの登録をします。既に他の事業をやっている方はUTRを持っているかと思いますが、私は会社員の収入しかなかったので新たに取得しました。


具体的な手順は"Check how to register for Self Assessment"と調べるとこれまた政府のウェブサイトが出てきます。

指示に従ってGovernment Gatewayアカウントをまだ持っていなければ作成し、Self Assessmentの登録を行うと後日郵送でUTRが載った手紙が届きます。登録は無料です。


このウェブサイトでは自分がそもそもSelf Assessmentをする必要があるかどうかも確認できます。私は初年度は恐らく申告の義務が出てくるレベルの規模にはならないだろうと思っていましたが、設備投資などの赤字分を申告することによって来年以降に繰り越せる為登録しました。



・VAT登録


スーパーなどで買い物をする際商品によって20%などのVAT(付加価値税)が掛かっているのは皆さん見たことがあるかと思います。これは登録されている事業者がVAT対象の商品やサービスを販売するときは価格にVATを上乗せしてお客様から預かり、それをHMRCへ納めるというものです。一方自分が仕入れや備品購入の際に支払ったVATは一定の条件のもとで差し引くことができます。


VATは売り上げの合計が9万ポンドを超える場合などでは登録必須ですが、個人で小さなビジネスを始める場合は登録しなくてよい場合が多いです。

(条件は色々あるので各自でご確認ください)

必須でなくても登録するメリットが大きい場合は登録する人もいます。


私は現在販売している商品がVAT対象ではないこと、包装や送料のVAT分を節約できることから一時検討しましたが、これから販売する全ての商品がVAT対象かどうか調べて判断しなくてはいけないことや会計処理が年4回に増え煩雑になることなどを考慮しまだ登録は見送っています。



・会計の記録管理を始める


ビジネスを始めるにあたりお金の出入りの記録が必要になります。

売上、材料費、梱包資材、光熱費、配送料、手数料など。

基本的にはHMRCに登録したtrading開始日からの登録になりますが、それ以前にビジネス用に購入したものも経費として登録できる場合があります。


近年はMaking Tax Digital(MTD)が導入され、年間総収入が一定額以上の事業者やVAT登録している事業者は対応ソフトを使用して四半期ごとに会計をまとめないといけないのでご注意ください。

MTD対象でない小規模事業者はExcelや紙の帳簿でも今は大丈夫です。


私はビジネス用の口座を個人のものと分けたかったのもあり、MettleというSantander系列のビジネス用オンラインバンクに口座を作ってFreeAgentという会計ソフトを使うことにしました。

FreeAgentは本来月額制のソフトウェアですが、Mettleの口座で月に一度以上入出金があれば無料で使えます。売上の振込や材料の仕入れなどで毎月1回は入出金があるので、ビジネスがアクティブである限りは難しい条件ではないと思いました。

また、2025年9月時点でMTDに対応していて実質無料で使える会計ソフトはこの選択肢しかありませんでした。

(私は現時点でMTDの対象ではありませんが、ズボラなので紙の帳簿は向いていないのと、もし将来MTDをする必要ができた時に同じソフトが使えれば便利だと思ったのです)

FreeAgentとMettleやPaypalのアカウントを紐づけて帳簿の管理をし、そのままSelf Assessmentもできるのでとても便利です。


ちなみにイギリスにはTrading Allowanceという制度があり、個人事業主で年間の売上が1000ポンド以下なら通常はSelf Assessmentを提出しなくて良い(つまりそもそもHMRCにも登録しなくていい)ことになっていますが、売上が1000ポンド以下であることの証明をするのに帳簿はつけて保管しておかなければいけません。また、設備投資などで利益がマイナスになっている場合はそのマイナス分を翌年以降に繰り越すのにSelf Assessmentが必要です。

とにかくどんな規模でやるにしても記録はきっちりつけるべき、ということです。



・食品衛生の勉強


日本では飲食店開業に食品衛生責任者の資格が必須ですが、イギリスには法律上必須の資格はありません。

その代わりとして食品衛生を学び、知識があることを証明するのに多くの小規模事業者は"Level 2 Food Hygiene & Safety"を取得しています。

複数の会社が同じトレーニングを提供していますができるだけ信頼性の高そうなところで受講することをおすすめします。それでもオンライン受講可能で数十ポンド程度でした。

監査で証明書を見られるので取っておくことを強くおすすめします。



・SFBB / HACCP を準備する


食品を扱う事業者はどうやって安全管理するかを説明できる必要があります。

その手段として主に用いられているのがSafer Food Better Business (SFBB)もしくはHACCP(ハサップ)です。


SFBBはFood Standard Agencyが提供している無料のpdfファイルで、かなりボリュームがありますが読み進めながら埋めていくと工程管理や記録ができるようになっています。

私は全部印刷してファイリングしました。特にオープニングチェック、清掃記録、冷蔵庫や冷凍庫の温度記録などは監査で見られるポイントです。


HACCPは食品の製造工程において食中毒菌などの健康被害を引き起こす危害要因(Hazard)を分析(Analysis)し、特に重要な工程(Critical Control Point)を監視・記録することで食品の安全を確保する衛生管理手法です。日本ではすべての食品事業者に義務化されています。

イギリスでは必須ではありませんが、私は発酵食品という比較的リスクの高い商品を扱っているので別途HACCPも作成しました。

SFBBが一般的な飲食店の一般的な衛生管理をカバーしているのに対し、HACCPは自分が実際に行う製造工程に合わせて具体的な工程管理ができ、強力な説明材料にもなります。

やり方を調べて自分で作ってもいいですし、MyHACCPでも作成できます。

危険要因や重要管理点などの深い理解が求められるのでHACCPに特化した研修もあります。



・キッチン環境を整える


他人に食品を提供するには一般家庭の清潔なキッチンよりもう一歩踏み込んだ衛生管理が必要となります。食品衛生研修やSFBBを進めるとどんな管理が必要かがだいたい見えてくるので、それに合わせてキッチンの環境を整えます。


監査でよく見られるところ:

清掃性

手洗い環境

調理時の温度管理

冷蔵庫温度

原材料保管

ペットとの分離

アレルゲン管理

害虫対策


私は自宅キッチンだった為、プライベートとビジネスの材料や器具が混ざらないようにしつつ、どちらの作業もやりやすいようにする必要がありました。小さく始める場合は冷蔵庫の中の棚ひとつ分だけビジネス専用にする、戸棚ひとつを販売用の材料置き場にする、ビジネスで使う清掃用品はカゴに入れてラベリングするなどでも大丈夫です。



・ビジネス保険


ビジネスするなら入っておいた方がいいです。

小規模フードビジネスだと

Public Liability Insurance £1m以上

Product Liability Insurance £1m以上

が基本だと思います。

マーケット出店やAmazonなどのプラットフォーム販売では加入必須だったり補償額が£2m以上という条件がある場合もあるので検討している販売方法があれば事前に確認しておくと安心です。

私は比較サイト経由で保険会社を探しました。基本的にはオンラインで契約できるようでしたがウェブサイトのフォームで私のビジネス内容に対する質問に答える段階でぴったりと当てはまるものがなかったので最終的には電話しました。相談した結果シミュレーションで出た見積もりより大幅に安くなりましたし、契約条件をちゃんとするためにも電話してよかったです。



・食品検査(必要な場合)


これは扱う食品によります。

私は発酵食品を扱っているので検査してもらうことにしました。

全てのラボが小規模事業者を相手にしてくれる訳ではなく、また信頼できる会社か不明だったり見積もりの桁が一つ多かったりと検査会社探しが意外と大変でした。何社もコンタクトをとった結果、所属している発酵ギルドが提携しているラボにお願いすることにしました。(ご興味ある方がいれば連絡くだされば紹介します)

食中毒菌などの安全性確認だけでなく、賞味期限設定や栄養表示のための検査もあります。

Inspection時に検査結果を見せるとかなり話がスムーズに進むと思います。


私は現在自宅キッチンで全て手作業で作っている関係で全ての商品が要冷蔵ですが、いつか調味料類を常温保存できるようにしたいと思って勉強中です。

自分でやっていると色々と手探りになってしまいますが、研修を受けたり自力で調べたり同業者にアドバイスをもらったりしてHACCPを作成し、その工程に沿って作業をし、最終的に検査で確認して必要があれば工程や保存方法を改良していくしかないのかなぁと思っています。経験者の方、アドバイスあればぜひお願いします。



・販売準備


やっとここです。

当たり前ですが一人でやっていると「製品をつくる」以外の仕事がたくさんあります。

ウェブサイトが必要なら作ったり、それに載せる写真の撮影、容器の発注やラベルの法規確認・デザイン・印刷、SNS運営やマーケティング営業、在庫管理や問い合わせ対応など。

マーケットに出るなら出たいイベントを探したり、ガゼボーや小物の手配をしたり。配送するなら各配送業者のサービスやポリシーを読み込んで比較したり梱包資材を準備したり。


会社員は得意なことだけ(とも行きませんが全部やるのに比べたら、です)に全力を尽くしていれば成り立つので他人と協力し合うって素晴らしいなぁとしみじみ実感しています。

私はデザインは完全なる素人ですが、ラベルやフライヤー、ショップカードなどは全てcanvaを使って作っています。

オンラインショップはSquarespaceやShopifyなどがサービスを提供しています。知識がなくてもベーシックなデザインのウェブサイトくらいはできます。いい時代ですね。



・食品衛生検査


イングランドとウェールズにお住まいの方はレストランやスーパーの入口に緑色で0から5の数字が書いてあるステッカーが貼ってあるのを目にしたことがあるかと思います。

これはFood Hygiene Ratingと呼ばれ、そのお店が衛生的に食品を扱っているかのひとつの指標になります。お客さんとしてレストランを選ぶときは基本的に3以上あると良いと言われていますが、「調理人が生肉を触った後手を洗わないことが複数回あった」でも3貰える場合があるのでお腹の弱い方は4以上が安心かもしれません。

ちなみにスコットランドは青いステッカーで"合格"か"要改善"かの2択になります。シンプルですね。


食品ビジネス登録後、このレーティングを決める監査があります。

飲食店では抜き打ちもあるようですが、私は自宅キッチンだったので事前連絡があって訪問日時を調整しました。

当日はカウンシルからEnvironmental Health Officerが二人組で来て1時間程度掛かりました。


キッチンで特に見られたのは「シンクが二つ以上あるか」「水とお湯が出るか」「冷蔵庫と冷凍庫の状態」「清掃用品の収納場所」くらいでした。

書類では「SFBBとHACCP」「温度や清掃の記録」「Food Hygiene研修の修了証」「商品ラベル」が見られました。

私の場合麹という特殊な食品だったこともあり、「どういう商品なのか」「どういう工程で作っているのか」「どこがリスクなのか」「どう管理しているか」を説明する時間がほとんどでした。

見られる場所や判断基準は人に依る部分も大きいですが、とにかく自信を持って質問に答えられるようにしておくのが大切です。


結果はその場で教えてもらえましたが、訪問後に結果がFood Standard Agencyに送られてウェブサイト(https://ratings.food.gov.uk/)に反映・公開されるまでは数週間〜数か月かかるとのことです。

後日サイトに反映された旨の手紙とステッカーが郵送されてきます。

この監査は一回やったら終わりではなく、リスクの大きさによって半年~2年毎に訪問がありその都度レーティングが更新されます。



・無料の研修やサポートを活用する


ビジネスを始めるために最低限必要なことは以上です。ここまで読むだけでも大変だったでしょう、お疲れ様でした。

最後に、日々沢山の小規模ビジネスが生まれては消えていくここイギリスではサポートや研修の機会が充実していると感じたので情報を置いておきます。


まずはお住まいのカウンシルのウェブサイトです。business growth hub等の名前でカウンシルの補助でオンライン/オフライン研修やメンター制度が無料もしくは割引価格で提供されている場合があります。カウンシル主催のネットワーキングなどのイベントの情報もチェックしておく価値ありです。

(Public fundにアクセス不可、と要件にあるビザの方はご自身が補助の対象か念のためにご確認頂くと安心です。大体はこちらから聞かなくても申し込み時のフォームで対象外だと申し込みができないようにはなっていますが)


他のビジネス情報サイトの例を貼っておきます。


Business.gov.uk


Small Business Britain


会計や労基関係はHMRCもウェブサイトやオンライン研修での情報提供を行っています。


Free Courses in England


輸出入やマーケティング、事業の始め方やファイナンス、ブランド構築、セルフアセスメントなどざっくりな内容のものが多くはありますが、全くの素人から始めた私には取っ掛かりとして十分な内容のものが多く大変助かりました。



・最後に


私は「イギリスに住んでいる人たちに美味しい麹を届けたい!」と決めてから少しずつ動いてあっという間にここまで来た感覚でしたが、こうやって振り返ってみると本当にやらなきゃいけないことが多いですね。

特に発酵食品だと信頼が大切なので監査前は不安でどうしようもなかったことを覚えています。


御覧の通り、「美味しいものを作る」だけでも大変なのにビジネスになると食品を扱う以外の作業の比率がかなり大きいです。冒頭に書いた通り万人におすすめできるものではありません。

一方、インターネットで集められる情報、オンライン販売、オンライン研修、canvaのようなツールのお陰で私のような田舎住みのエンジニアリング一筋だった人間でもアイディアを形にすることができています。

これを読んだ方がやりたいことを形にしてみようと少しでも思ってもらえたら嬉しいです!




 
 
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